三本槍岳頂上(標高1917km)は霧で覆われ見通しがききませんでしたが、歩き始めると、すぐに晴れ間が広がってきました。すると、お花畑があちこちに見えてきました。ここからは標高1468メートルの大峠まで、下りになります。 さあ、大峠まで、花の道を歩きましょう。 足元には、高山植物が咲いています。エゾシオガマが群生しています。ウメバチソウやオヤマリンドウも混生しています。期待を抱かせます。 見晴らしのいいところに、とぼけた感じのオヤマボクチ(キク科ヤマボクチ属)が迎えてくれます。花はアザミに似ていますが、綿毛に包まれています。刺が多そうですが、下向きに開口部があり、昆虫の訪問を待っています。「ボクチ」は「火口」のことです。 形がユニークな花をしたエゾシオガマ(ゴマノハグサ科シオガマギク属)がたくさん生えています。高山帯から亜高山帯の草地に生育します。白色かクリーム色の花は上から見ると巴状になっています。オヤマボクチといい、エゾシオガマといい個性ある草花たちです。 美しいミヤマコゴメグサ(ゴマノハグサ科コゴメグサ属)が群生していました。白色の花びらに鮮やかな黄色の紋があり、濃紫色の二つのオシベの束が趣を添えます。ゴマノハグサ科の草花もまことに個性的です。 紅紫色の花が目立ちます。花びらには濃紅色の筋が特徴です。ハクサンフウロ(フウロソウ科フウロソウ属)の花期は7月下旬~9月中旬と長く、また一つの花の開花期間も長いようです。花には雄の時期と雌の時期があるからです。下の写真の花はメスの時期にあり、メシベの先が5つに裂開しています。オシベは既に花粉を出し終わり、萎だれています。 亜高山帯から山地帯へ歩いていますから、ウメバチソウ(ユキノシタ科ウメバチソウ属)に会うべくして会います。花茎の頂き白い花の花びらには緑色の脈が目立ち、気品があります。太く白い花糸を持つオシベとともに、糸状のオシベ(仮オシベ)が五つの束にまとまっていて、ウメの花を連想させます。名花だと思います。 ウスユキソウの群落もありました。ウスユキソウ(キク科ウスユキソウ属)も亜高山帯から山地にかけて分布します。草花の種類が多いのは、この辺りが亜高山帯と山地の境界地帯にあるからでしょう。ウスユキソウはヨーロッパアルプスやピレネーに自生するエーデルワイスのなかまです。エーデルワイスは「高貴な白」という意味だそうですが、純白ではなく、ふんわりとして、雪を帯びたような質感が高貴なのでしょう。ウスユキソウもまさに「エーデルワイス」です。 一挙に下りて、大峠に至りました。 向かう先に深山が重なり合って見えます。高山帯にある岩場や礫地は姿を消し、深い森が連なっています。この山々に、かつて街道が通っていました。会津西街道です。 矢板から那須山中に入り、山斗小屋宿、そして標高1468メートルの難所である大峠を越えて会津に至る山の中の街道です。かつての奥州街道など幹線道は関所などで期制が強く、また費用が多くかかることから、代替の街道として、江戸初期に整備されたといいます。戊辰戦争の戦闘の舞台ともなりました。 今日の宿がある山斗小屋温泉に向かいます。会津西街道を上って行きます。大峠を越えるとブナ林が広がっていました。3つの沢を渡り、アップダウンを繰り返します。そして、三斗小屋温泉まではきつい登りがあります。つらい中にも、様々な草花との出会いがありました。 マルバダケブキ(キク科メタカラコウ属)が鮮やかな大柄の花をつけていました。深山の常連で、花茎の高さは1m程度になります。根から伸す葉はフキに似ています。 マルバダケブキと同じなかまのオクモミジハグマ(キク科モミジハグマ属)の花にも会うことができました。葉は大きいが、花は目立たず、注意深く歩かないと見過ごしてしまいます。 葉の集まりの中心から伸した花茎に、花の集まりである頭花をつけます。それぞれ3つの花の集まり(小花)に分かれているようです。こうしたきれいな花に出会うと気分が安らいできます。 トリカブトを見かけました。なんといっても、青紫色の花色が印象的です。ブナ帯にはふつうはサンヨウブシというトリカブトが多いのですが、このトリカブトは葉などの様子から、ジョウシュウトリカブト(キンポウゲ科トリカブト属)と同定しました。草丈1メートルほどあり、大形の草花です。葉の腋にむかごをつけるのが決め手になります。 盛りは過ぎていましたがミヤマカラマツ(キンポウゲ科カラマツソウ属)の花が咲いていました。深山の林内などに生えるカラマツソのなかまです。花びらはなく、萼も早く落ちてしまうので、たくさんのオシベが花の形をつくっています。 山地の木陰や草地などに、しばしば大群落をつくるテンニンソウ(シソ科テンニンソウ属)も大型の草本です。 ・茎の先端に花序を形成し、多くの淡黄色の唇形の花をつけます。一つ一つの花の花びらは淡い黄色で短く、4本のおしべと1本のメシベが長く突出しています。遠目では分かりませんが、近づいてよく見ると美しい花が多いブナ林です。 毎夏訪れる那須の山々ですが、今回は三本槍から大峠コースを通ったので、最後の大峠から三斗小屋温泉の道程がこたえました。それでも珍しい草花と会うことができました。初対面もありました。苦労したから、幸せな出会いがあったのかもしれません。 宿に着いたら、一風呂浴び、ビールをいただきました。 10月中旬、今回のコースはスケールの大きい紅葉風景が展開します。 また訪れたいと思います。
by seppuka
| 2013-09-07 15:23
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