皇居東御苑、二の丸庭園が日ごとに秋色を深めています。紅葉するカエデの樹木はまばらに植栽されていますが、この時期よく目立ちます。特に樹木全体が紅くなるように紅葉するオオモミジ(あるいはオオモミジ系統の品種)遠目にも鮮やかです。ビューポイントとして、景観の要になっています。今も東京に残る大名庭園の雰囲気を感じます。 さすが、皇居の庭園のカエデです。陽当たりが絶好の所に生えているせいか、枝がよく伸びています。樹高は15メートルほどでしょうが堂々とした樹形です。 東御苑のカエデは群れることなく一本立ちで絵になります。江戸城の庭園を彷彿とさせるこうしたカエデの銘木は樹齢も相当重ねていると思われます。晩秋にこそ鑑賞したい色彩です。 オオモミジより葉の小さいイロハモミジ(あるいはイロハモミジの園芸品種)も池の水面上に枝を広げています。紅葉は紅一色ではなく、紅色から緑へ諧調があり、繊細さの中に品格が感じとられます。 二の丸白鳥濠の紅葉の錦繍を織りなすイロハモミジの美しさはなんとも驚くばかりです。色は透き通り、清楚で、これこそ日本の紅葉というと言い過ぎでしょうか。 赤と緑はほぼ補色の関係にあります。色彩のコントラストが強く、色合いの違いが際立ちます。その橋渡しに黄色から褐色の色を帯びた葉が微妙な諧調を成します。 紅葉は逆光で見ると、美しい。輝きの中に様々に織りなす色彩は芸術的でもあります。 本丸の庭園も晩秋の色彩に溢れています。ケヤキ(ニレ科ケヤキ属)の大木が日の光をたっぷりと浴びています。これならば黄色から褐色へそして紅色の紅葉が見られるかもしれません。ここではゆったりとした小春日和が味わえます。 晩秋の色彩を一杯に纏い、ここでも主役はカエデです。「紅葉の効用」についてはよく分からないところがあります。私は「かくも人を喜ばせる樹木だから、人が好んで植栽し、その結果、カエデの子孫が増えていく」からかなと考えています。 広々とした庭園の要所に樹冠を大きく広げています。落葉を控えて「最後まで精一杯輝いてみせる」。自分の生き様になにか投影したくなるような輝きです。 海外からやって来たカエデがあります。ベニカエデ(カエデ科カエデ属)が三の丸尚蔵館近くの休憩所横に紅葉しています。昭和天皇の平癒を祈り、カナダから贈られたものだと思います。アメリカハナノキの別称もあります。 カナダはメイプルをはじめ黄葉するカエデが多いと聞いています。おそらくカナダでは紅葉するカエデは少なく貴重種かもしれません。日本のカエデとは趣が違うように感じます。 カエデの銘木が多い二の丸庭園の一角で、ダンコウバイ(クスノキ科クロモジ属)が黄葉しています。低木ですが樹形は丸くなり、黄色い葉を体一杯につけます。 ダンコウバイの黄葉は特に目立ちます。ダンコウバイの黄葉は撮影が難しく、露出に注意を払ったつもりでもアンダーになってしまいます。黄葉の反射率が高く、その分日が当たると特に鮮やかに輝きます。 ダンコウバイと同じなかまのクロモジ(クスノキ科クロモジ属)も本丸入り口の林に黄葉しています。雑木林によく生え、香りのある樹木として親しまれます。 二の丸から三の丸に上る坂道の横にシナマンサク(マンサク科マンサク属)が黄色い葉に樹木全体が覆われています。シナマンサクは冬に真っ先に花を咲かせる早咲きの樹木の一つです。冬が進んでも葉を落とさず、翌年花が咲く頃になって、ようやく落とします。横に樹形を広げるので花も黄葉も印象的です。紅葉ばかりでは面白くありません。黄葉があってこそ、晩秋は映えます。 東御苑二の丸の雑木林が日増しに色彩を濃くしています。千代田区一丁目一番にある雑木林です。訪れる人は比較的少なく、もったいないかぎりです。 雑木林のゾーンの黄葉の主役はクヌギ(ブナ科コナラ属)です。樹高が高く、見栄えがします。都心にいることを忘れます。 前号で紹介したマンサク(マンサク科マンサク属)が雑木林にも映えていました。黄色から紅色へ、美しい階調がすばらしい。 草原をハクセキレイ(スズメ目セキレイ科)がピョコピョコ走っていました。東御苑ではねぐらをつくりやすいのでしょうか。シジュウカラやヤマガラなどもよく見られ、大都会の中心にある森は鳥も棲みやすい空間となっています。 見上げれば紅葉や黄葉の背後に高層のビル群が聳えています。無機質な都会の色に潤いを与える、晩秋の色彩です。
by seppuka
| 2013-12-03 15:52
| 連載 花模様
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