高幡不動は関東三大不動のひとつ、高幡不動尊は梅雨の頃、7500株ものアジサイが咲き誇ります。休日ともなればかなり混みますが、鎌倉の明月院や長谷寺のようなひどい混み方ではありません。ここ数年散策路も整備され、あじさい園も拡張されたので、園内をゆっくりと鑑賞しながら歩けます。 6月13日、小雨が終日降っていました。高幡不動の紫陽花園は紗をかけたような風景になっていました。アジサイの花は雨の日のほうが生き生きしているように見えます。それに加えて、ガクアジサイの花の紫色はことのほか落ち着きがあり、「梅雨の季節もなかなかいいな」と感じることしきりでした。 ガクアジサイは「日本の花」です。伊豆の海岸など暖かい太平洋沿岸に自生します。葉に光沢があるのは海岸に適応する潮風対策でしょう。装飾花が花の集まりの外周に一列に並んでいます。その様を額縁に例え、「額紫陽花」の名がありま装飾花は虫を呼ぶための宣伝に徹していますから、性機能はありません。果実を作るのは中心部から広がる小さな両性花です。装飾花は小さい両性花の花々の咲き始めから、咲き終わるまでひたすら咲き続けます。 一つの花の中にオシベとメシベとを持つ花は両性花と呼ばれます。アジサイの両性花は小さく、ルーペでよく見ないと花の構造が分からないほどです。小さな花ですがちゃんとオシベは10本あります。中心部には低くメシベの柱が3~4個あります。 装飾花は大きい方が虫の目を惹くために有利ですが、両性花が小さいのも訳があります。小さい方が花の密度を高く、たくさんの花が咲けます。ほかの株のガクアジサイの花粉をつけた虫が訪れてくれれば、たくさんの花が受粉できます。虫の1回の訪問たくさんの花が一度に受粉できるという訳です。見ているとハナバチが次から次へと小さな花を渡り歩き、精力的に吸蜜していました。 アジサイはガクアジサイを改良してつくられた日本生まれの園芸植物です。花全体が装飾花に変わっています。セイヨウアジサイはこの日本産のアジサイのヨーロッパ改良品種です。イギリス人が1790年、ロンドンのキュー植物園に持ち帰ったアジサイに品種改良が加えられ、つくられました。日本のアジサイより全体に大形で、見栄えがします。日本でも広く普及し、現在では「アジサイ」といえば、このセイヨウアジサイをさすほどです。 セイヨウアジサイは土壌の酸性度や土壌の肥料分の違いによって、花の色が微妙に変化します。そのため、「七変化」とも呼ばれます。ふつう土壌が酸性なら花色は青くなり、アルカリ性なら赤くなるといいます。しかし、土壌の酸性度は花色を決定する要因の一つに過ぎません。花の色は、アントシアニンのほか、その発色に影響する補助色素や、土壌の酸性度、アルミニウムイオン量、さらには開花からの日数によって様々に変化するといいます。だから、仮に酸性土壌であっても地中のアルミニウムの量が少なければ花が青色になることはないのです。 ガクアジサイを母種とした園芸品種をもう一つ紹介しましょう。あじさい園では「ハナビ」とありますが正式にはスミダノハナビです。装飾花は大きく八重で、柄が長く垂れてハナビのように見えます。 ガクアジサイは花色も豊かで、数多くの品種があるアジサイの母種として重要な役割を果たしてきました。 ガクアジサイより全体的に小ぶりで、繊細な感じがするヤマアジサイも重要な母種(原種)の一つです。関東地方以西に分布し、山地湿った斜面などでよく見ます。高幡不動のアジサイ園に多く植栽されています。 装飾花が、多数の両性花を囲んでいて、ガクアジサイと同じ花の集まり方です。花の色は、白色から淡青色で、のちに淡紅色に変わるものが多いといいます。変異しやすく変種が生まれやすく、こうしたことから多くの園芸品種が生み出されました。 アマチャはヤマアジサイの変種の一つで、全国で栽培される日本特産種です。外側には、淡紅紫色の装飾花が数個あります。その花びら(正確には顎)は丸く、重なり合っているので1個しかないような印象を受けます。「甘茶」とも書き、葉を乾燥し発酵させたものを煎じると甘茶ができます。アジサイの葉は青酸配糖体をふくみ有毒ですが、こちらは大丈夫なのでしょう。 クレナイはヤマアジサイの園芸品種です。装飾花は次第に赤が濃くなっていきます。花びらは3枚。アマチャよりほっそりとしています。上品で美しく、傑作の品種です。 クロヒメアジサイもヤマアジサイの花色 が青くなった園芸品種です。クロヒメは長野県の黒姫ではなく、「黒いヒメアジサイ」という意味です。古来、濃い紺を黒と呼んでいたそうです。野趣に富み、味わいのある品種で、これも傑作です。 アジサイの原種がまだありました。コアジサイはユキノシタ科アジサイ属の日本固有の原種です。花は、装飾花はなく、すべて両性花。花色は白色か薄らと青色を帯びます。このコアジサイの雰囲気は装飾花がないこともあって、ガクアジサイやセイヨウアジサイとはかなり違います。山地の明るい場所でこの花に出会うと、うれしくなるアジサイのなかまです。 最近外国から来たアジサイも植えられています。カシワバアジサイの原産地は北米東南部です。真っ白い花は円錐状あるいはピラミッド型につきます。八重咲きと一重咲きがあります。高幡不動では群れて植栽されていて目立ちます。 葉の形がカシワに似ていることが、和名の由来になっています。葉には切れ込みがあり、秋には見事に紅葉します。紅葉が美しいこともあり、鎌倉の寺院でも植えられています。古くから日本にもあったといいますが、最近、一般に出回り始めています。秋にも楽しめる外来のアジサイです。 梅雨の日、高幡不動の多彩なアジサイをゆっくりと味わうのはいかがでしょう。多彩なアジサイがあじさい園に集合しています。
by seppuka
| 2013-06-19 17:35
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