2月14日、新宿御苑は冬の真っただ中にありました。枯れ草色の芝生が一段と広く感じられる季節です。冬はサザンカ、カンツバキ、スイセンが咲いていたはずです。 早春、御苑にはカンザクラの大木がな見事な花を咲かせます。今年の咲き具合はどうでしょうか。 歩いてみれば「早春」に出会えます。紅梅が咲いていました。新宿御苑のウメは品種の表示がありません。園芸品種は同定が難しいのです。私はこのウメが早咲きで、その花模様から「寒紅梅」としています。 早春の光を目一杯反射させて、フクジュソウ(キンポウゲ科フクジュソウ属)が咲いています。やはり早春です。花の咲きはじめの頃は葉が出ていません。早春も始まったばかりのようです。 花は陽が当たると朝から開きます。そして陽を追います。花びらは緩やかに湾曲し、全体がパラボラアンテナ状になり、光を中心部に集めています。中心部は10度近く温度が上昇します。花にはハナバチやヒラタアブが暖を求めてやってきます。何とも早春の花の特性を生かしているフクジュソウです。 さて、肝心のカンザクラはどうなっているのでしょうか。サービスセンター近くのカンザクラは三分咲きでした。それでも華やぎが感じ取れます。 カンザクラはサクラの栽培品種の中で最も早く開花します。例年、2月中旬には見ごろになっていますが、今年は開花が遅れているようです。 お目当ての中央休憩所近くのカンザクラの大木はどうかというと、一分咲き。がっかりです。御苑にあっては最大のカンザクラで、早春のシンボル的な存在です。満開まであと10日間はかかりそうです。 そこで、去年までの咲きっぷりを見てみましょう。下の写真が満開時のカンザクラの花模様です。樹高は⒖メートルほどですが、枝を横に大きく伸ばし、見事な花姿になります。 花色は開花直後は上品な白色です。やがて次第に薄い紅色を帯びてきて、魅力的です。カンザクラは江戸時代後期から関東以南の暖地で広く栽培されてきたといいます。 カンザクラはカンヒザクラとヤマザクラ系の雑種と考えられる栽培品種の系統です。親のヤマザクラは花と同時に赤褐色の葉を伸ばしてきます。カンザクラは花の後に葉を展開しますが、葉はヤマザクラのような赤褐色の葉です。 たった1本で観賞できるエドヒガンやシダレザクラを私は「一本桜」と呼びます。ソメイヨシノのように、もっぱら群れた様を観賞するサクラは「群れ桜」です。新宿御苑のカンザクラは堂々の一本桜です。 オオカンザクラはカンヒザクラとオオシマザクラの種間雑種と考えられていますが、ほとんどカンザクラと区別がつきません。違うのはカンザクラより遅く咲くことです。また出てくる葉が緑色(カンザクラは赤褐色)で、親のオオシマザクラの葉の出方と似ています。 新宿御苑の大木のカンザクラはあまり知られていないようです。花つきのいいカンザクラは枝いっぱいに花を咲かせます。訪れた多くの人が感嘆の声をあげます。小鳥の賑やかな声を聞いて、「メジロがいた」と歓声をあげます。 そう、メジロがカンザクラによく群れています。眼の周りに白い輪がまことに可愛い。黄緑色の体も特徴的な小鳥です。花の蜜を好んで食べます。 カンザクラの花蜜を吸う姿がよく見られます。早く咲くカンザクラはメジロに貴重な食糧源を提供します。多くの花を咲かせるカンツバキ。忙しそうに花から花を渡り歩き精力的に吸蜜します。 メジロはつがいの結びつきが強く、2羽で連れ立って行動し、眠るときも体を寄せ合っているといいます。あと数日すれば可愛いメジロたちに逢えます。 春の訪れを知らせるマンサク(マンサク科マンサク属)が黄色いリボン状の花を咲かせはじめました。枝いっぱいに花を咲かせるので「満作」、早春に山で一番早く咲くから、「まず咲く」が転じて名があるといいます。 サンシュユ(ミズキ科ミズキ属)の蕾も開きはじめました。花芽は丸く、総苞片に包まれています。中に蕾がたくさんあります。カンヒザクラと競うような黄色い花です。 枯れ芝生が温かくみえる早春の新宿御苑です。カンザクラが咲きはじめる新宿御苑です。
by seppuka
| 2015-02-13 18:16
| 連載 花模様
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